ZÍ 早稲田大学教育学部地球科学専修
Department of Earth Sciences, School of Education, Waseda University (English)
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構造地質学研究室:断層および剪断帯の構造地質学とテクトニクス (高木先生の定年退職により本研究室は2025年3月に閉じます.)

専任教員:高木秀雄 教授 (理学博士:名古屋大学) 研究・教育活動情報

淡路島領家帯
淡路島領家帯,野島花崗閃緑岩を貫くヒールドマイクロクラックのカソードル ミネッセンス像
青:カリ長石,暗紫色:石英,黄緑色:斜長石,斜長石の内部の暗色部は角閃石.
カリ長石を貫く暗色脈が,ヒールドマイクロクラックを充填するカリ長石.

 日本列島のようなプレート収束域のテクトニクスを論ずる上で,剪断帯の運動像の解析は構造地質学の分野では欠かすことのできないものとなっています.本研究室では,マントル上部から地殻表層部にわたる深度において剪断変形を受けて形成された断層岩を対象とし,そこに記録された運動像と変形像および変形環境や変形史の解明を行っています.具体例としては中央構造線,棚倉構造線をはじめ北海道から九州および韓半島や雲南省,ネパールヒマラヤの剪断帯に至るまで,幅広い地域を扱っています.また,中央構造線に沿って,領家帯と三波川帯の間にあったと想定される地質体(古領家帯)の復元も,日本列島の構造発達史を解明する上で近年の大きな研究テーマのひとつです.
 研究の手法としては,詳細な野外地質調査と定方位岩石試料の顕微鏡観察やファブリック解析が主体となりますが,そのほかEPMAによるBSE像の観察と鉱物分析,X線粉末回折,電子顕微鏡による下部組織の観察,全岩化学分析,鉱物の年代測定,カソードルミネッセンスによるヒールドクラックの観察,帯磁率違方性の測定なども,目的に応じて行っています.


堆積学研究室:堆積岩から読み取る地球表層環境

専任教員:太田亨 教授 (博士(理学):早稲田大学) 研究・教育活動情報

Allende隕石
サージ堆積物中のクライミング・デューン.堆積物の移動速度が速く,かつ,大量の堆積物が供給されたことを示す特異な堆積構造.韓国,済州島

 堆積岩は地球表層環境における物理的・化学的プロセスの総合的な作用によって形成されます.したがって,堆積岩の構造や化学組成を解析することにより,地質時代における地球表層の様々な情報を時系列的に読み取ることが可能です.本研究室では,このような記録から過去の日本列島の堆積環境・古気候を解析し,東アジア地域がどのように形成・発達してきたのかを復元する研究をおこなっています.また,日本列島の中でも特異な地質体である黒瀬川帯の構造発達史を解明する研究にも取り組んでいます.
 研究の手法としては,野外における地質調査を重視しています.これに加えて,堆積岩の物性計測,粒度分析,鉱物分析,化学組成分析をおこない,太古地球の解明に挑んでいます.


火山学研究室:火山噴火と地殻浅所でのマグマプロセス

専任教員:鈴木由希 教授 (博士(理学):東京大学) 研究・教育活動情報

Allende隕石
桜島火山,昭和火口の噴火(2013年7月)
Efremovkaコンドライト
新燃岳2011年噴火で最初に噴出したマグマの破片

 日本は世界有数の火山国です.火山は美しい景観やダイナミックな噴火で人々を魅了し,温泉や鉱床などの恩恵ももたらしますが,時として大きな災害を引き起こします.そのため火山の研究は,防災・減災への応用も意識しながら行われます.専修の他の研究室と比べ特異なのは,数十万年前以降に形成された若い地質体(火山体)が主な研究対象で,進行中の地質現象(噴火)も対象に含まれる点です.現象の時間スケールも短く,火山の一生が数十万年,一回の火山活動は数年,一回の噴火は数時間〜数分程度であるのが一般的です.
 地表で観察される噴火現象は,規模,様式,継続時間等において多様で,一回の火山活動や火山の一生の中でも変化していきます.その背景にある仕組みを探る上で,地下におけるマグマ供給系の構造とマグマプロセスの解明は欠かせません.マグマが地表に噴出し急冷されて出来た火山岩には,マグマ生成〜マグマ溜まりでの進化〜噴火時の地表への移動という歴史が,それらの時間スケールの情報と共に記録されています.この火山岩という"地下からの手紙"を解読し,噴火現象の多様性や,噴火誘発過程,火山の発達史などの理解につなげることが,本研究室の主要なテーマです.
 前述の岩石学の手法と並んで,火山地質学の手法も重視します.噴火の度に残される地層・溶岩流と,それらの層序は,過去の一回の火山活動の推移(噴火様式や規模の時間変化)や火山誕生後の噴火履歴を知る手がかりとなります.つまり意味のある岩石学的研究を行うには,火山地質学についての基礎データが不可欠ということです.なお火山活動には火山毎の特徴があると信じられていますので,噴火履歴を知ることは,将来の噴火の特徴を予測する上でも極めて重要なことです.


進化古生物学研究室:温室地球時代の地球表層環境と生物進化の相互作用

専任教員:守屋和佳 教授 (博士(理学):東京大学) 研究・教育活動情報

Allende隕石
イギリス・ドーセットのLyme Regisに分布する下部ジュラ系(Blue Lias)に見られるAmmonite Pavement
 
Allende隕石
アメリカ・サウスカロライナ州に分布する上部白亜系Pee Dee層から産出したベレムナイト化石(Belemunitella americana).同種のベレムナイト化石から炭素・酸素同位体比測定の基準となった国際標準試料が作成された.

 およそ46億年前に地球が誕生して以来,地球は現在のように大陸氷床の存在する氷室地球時代,大陸氷床が一切存在しない温室地球時代,あるいは,地球表層のほぼすべてが氷床に覆われる全球凍結時代を繰り返し経験してきました.現在私たちは,氷期-間氷期サイクルの存在する氷室地球時代に生きていますが,長い地球史を眺めてみると,南極にも北極にも氷床の存在しない温室地球時代のほうが圧倒的に長い時間存続していたことが解っています.
 特に,およそ1億5千万年前から3千5百万年前の白亜紀から古第三紀は,典型的な温室地球時代として知られており,現在とは全く異なる地球環境のなかで,現在とは全く異なる生物が多様に進化した時代であったことが知られています.本研究室では,これらの時代における海水温や海洋の循環パターンの変化と,アンモナイト類を中心とする海棲軟体動物や,殻をもった原生生物(有孔虫)の古生態を詳細に議論することで,当時の古環境変動と海棲生物の多様性変動との関連を議論することを目指しています.
 このための研究手法として,野外調査に基づく化石の産出様式や,産出した化石の形態解析に加え,地球化学的手法も積極的に導入しています.特に,炭酸塩化石の炭素・酸素同位体比分析や,有機分子化石の分析は,過去の海水温や,過去の生物の生息場所や成長速度などを知る手がかりになります.このように,伝統的な手法と,最新の手法を組み合わせ,数十万年スケールの地球環境変動や,1個体の生物の一生の記録など,様々な時間スケールの現象を多角的に議論し,生物多様性変動や新たな生態系の進化と,その背景にある古環境変動との相互関係の明らかにするのが本研究室の特色です.


地球化学研究室:高圧実験技術と化学分析を駆使した地球深部の物質科学

専任教員:飯塚理子 准教授 (博士(理学):東京大学) 研究・教育活動情報

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図1:高圧発生装置ダイヤモンドアンビルセル(DAC)と試料室内の様子。
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図2:高圧中性子実験の様子と回収試料の元素マッピング結果。

 我々人類は、多種多様な生命体が活動する地球の薄皮1枚程の深さしか到達できていません。私たちは、他の惑星や天体以上に、地球内部のことをまだきちんと理解し切れていないのです。では、地球の中はどう調べるのでしょうか?本研究室では、種々の高圧発生装置を使って地球内部の状態を再現するという高圧実験と化学分析の手法を組み合わせて、未踏の地球深部で起きている現象や進化について探究しています。
 具体的には、地殻〜マントル〜コアに相当する超高圧高温(数十〜百万気圧、数千度)の条件下で、地球や惑星内部に存在するモデル物質(鉱物や金属)中の元素の振る舞いについて調べ、地球の元素移動や鉱物の相変化について明らかにしています。特に地球深部にまで運搬される水(水素)や地球内部で枯渇している希ガスの挙動に着目しています。放射光X線・パルス中性子線を用いた回折測定や、顕微ラマン・赤外吸収分光測定を用いた『高圧下その場観察』、回収試料の組織観察と化学分析などから、対象とする物質の化学反応や結晶構造・物性の変化を解明していきます。地球や惑星の成り立ちに関わる謎を『化学』の視点で紐解いていくためには、地球化学を超えた様々な分野の融合が不可欠であり、他大学・研究所との共同利用研究も行っています。


鉱物学研究室:ミクロな視点で素過程を調べ、マクロな現象に物質科学的証拠を付与する

専任教員:奥村大河 准教授 (博士(理学):東京大学) 研究・教育活動情報

透過電子顕微鏡
図1:原子レベルで物質を観察することができる透過電子顕微鏡
ファーテライト
図2:鮭の頭の中にある星状石と呼ばれる耳石のひとつ。地球環境ではほとんど産出しないファーテライトという炭酸カルシウム結晶でできている

 地球表層に存在する物質の構造やその形成機構の解明を通して、マクロな現象を理解することを目指しています。また、電子顕微鏡を中心とした微細構造解析手法によって課題を解決していくことも、当研究室の大きな特徴のひとつです(図1)。
 最近特に注力して取り組んでいる研究テーマは「バイオミネラリゼーションのメカニズム解明とその応用」です。生物の体は有機物だけで形成されているのではなく、無機物でつくられた組織(硬組織)も多く見られます。こうした硬組織はバイオミネラル(生体鉱物)と呼ばれ、その形成過程がバイオミネラリゼーションです。身近な例では我々の歯や骨であり、これらには水酸アパタイト(hydroxyapatite)という鉱物が多く含まれていることが知られています。この他にも貝殻、卵の殻、甲殻類の外骨格、耳石などが挙げられますが、これらは主に炭酸カルシウムで形成されています。骨や貝殻などのバイオミネラルは、ときには無機的に形成された物質とは比較にならないほど優れた機械的特性を示し、その生命活動を支えています。そしてこの硬組織の優れた特性は、多くの場合バイオミネラルの構造に由来しています。それを様々な分析手法で調べると、結晶相、サイズ、形態、結晶欠陥、結晶方位等が厳密に制御されていることがわかります。これまでに多くの研究でそのような制御機構を明らかにしようと試みられましたが、いまだに明瞭に説明できないことばかりです。またバイオミネラルは生命が存在できる常温・常圧の地球表層環境において、比較的短時間で形成されることもその特徴のひとつです。この点においても、岩石中に見られるような鉱物とはその形成条件が大きく違っており、しばしば熱力学的に準安定な相が形成されます(図2)。
 生物が進化の中で育んできたバイオミネラリゼーションとはどのようなものか、これは物質科学的にも地球科学的にも大変興味深い問題です。多くのバイオミネラルは有機基質の上で形成し、またその結晶中には生体から分泌されるかなりの量の有機分子を含んでいます。よってバイオミネラリゼーションにはこれらの有機基質や有機分子が関与をしていることが予想されます。炭酸カルシウムの多形、形態、結晶方位等がどのように有機基質、有機分子で制御されるのか、我々はまずこのような基本的な問題を明らかにする研究を続けています。またこれらの研究は様々な学問分野の境界領域にあり、東京大学をはじめとする学外の研究室とも共同で研究を進めています。


地球物質科学研究室:プレート収束域の岩石学と地球内部の実像

専任教員:田口知樹 准教授 (博士(理学):名古屋大学) 研究・教育活動情報

淡路島領家帯
四国中央部の三波川変成帯。石英エクロジャイトの祠から下界を望む。

 世界各地の造山帯には、地下深部から上昇してきた高圧型変成岩が分布しています。これら岩石には、それぞれ異なる形成の歴史すなわち地球深部から表層に至るまでの物理化学的環境の変遷が記録されています。本研究室ではプレート収束域(沈み込み帯や大陸衝突帯)の岩石がどのような条件で形成され、その後どのような変遷を経てきたか、岩石学・鉱物学を軸にマルチスケールで明らかにしようとしています。調査対象地域は、日本の三波川変成帯や中国の蘇魯変成帯などです。
 研究手法としては、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナライザー、ラマン分光分析装置などを用いる室内実験・観察が中心です。最近では、他研究機関と共同で集束イオンビーム装置と透過型電子顕微鏡を用いて、ナノレベルの視点から変成鉱物の特性も調べています。専門的な研究のみではなく様々な分野の研究者との交流を重視しているので、共同研究も積極的に進めています。


衛星地球観測学研究室:衛星データで解き明かすダイナミックな地球像

専任教員:田中優作 講師 (博士(理学):北海道大学) 研究・教育活動情報

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図1:重力データの主成分分析、第一主成分(60.1%)
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図2:重力データの主成分分析、第二主成分(23.5%)

 「我々が住む大地は一体どんな姿をしているんだろう?」
 人類は太古からこの問いに向き合い続けてきました。周知の通り、遥か昔は大地は平らだと思われていました。しかし紀元前6世紀ごろになると大地が球体であるという考え方が強まってきます。たとえば水平線の向こうから船が近づいてくるときには、船の帆の上端が最初に見え、それから徐々に船全体が見えてくることや、大規模な移住をすると、星々の見え方が変化することなどの観測事実から、大地の形状を推定したのでしょう。
 このように「観測に基づいて、地球(または太陽系の他の惑星・小惑星・衛星)の姿(形状・回転・重力・自然環境や、その時間変化を含む)を考える学問」を、現代の学問の世界では「測地学」(geodesy)と呼びます。宇宙技術を利用する測地学を「宇宙測地学」(space geodesy)と呼び、宇宙技術の中でも、特に人工衛星を利用する場合は「衛星測地学」(satellite geodesy)といいます。
 本研究室は、主に衛星測地学を行う研究室です。人工衛星のデータから、地球の形状・回転・重力・自然環境や、その時間変化を調査します。人工衛星のデータとは、地上の何らかの位置や温度、重力、物質量など、地球上の物理量の観測データであり、データ解析とは、主に統計学に基づいたものです。だから、何らかの地上の物理量を統計的に解析することが本研究室の主要な研究手法ということになります。
 興味深い一例として、地球の重力を観測している人工衛星が観測した、日本周辺の重力データを主成分分析という方法で解析した結果の図を示します。詳細は分からなくても、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に伴って日本の重力が変化している様子が見て取れることでしょう。図1では主に地震後に進行する変化が、図2では主に地震時に一気に引き起こされる変化が見えています。なお、この変化量は極めて小さいので、人間が感じ取ることはできませんし、我々の生活に影響を与えることもありません。本研究室では、このように、衛星データを利用して、自然の不思議を調べています

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